もう随分と長く尺八と付き合ってきましたので、科学的な根拠は何もありませんが、経験則で私なりに漆の硬さの変化と音色については、私なりの定説を持っています。

先ずは、「漆は塗ってから何十年も掛かって段々と金属の様に硬くなっていく。」ということですが、これは何かの本で読んだので私の説ではありませんが私もその通りだと思います。
ですので何十年も吹き込まれた尺八は漆だけのことではありませんが音色や響きに深みが出てくるのだと思います。

塗ったばかりの漆の硬さの変化については、次の資料を見つけました。

FullSizeRender

見ていただくとわかると思うのですが、漆の塗り立てでは、卓球台の上にラバーコーティングしているようなものでまだまだ本来の状態にはなっていませんから、尺八の場合でもこういう状態で評価してしまうのは正当な評価ではないかもしれないですね。部分的に不安定なところがあったとしても、吹き込むことで解決する場合もありますし、ピッチバランスの関係で生じている部分もありますから、見極めが難しいところです。要はすぐに答えを出さないことが大事なことです。

上の表では、塗布後90日までの硬度変化のグラフですが、尺八の音色に関してはそこから先の微々たる変化が気になるところというか、大事なのだと思います。
とは言ってもそれを数値化して根拠に裏打ちされた話はできませんので、ここから先は私の全くの私見というか妄想みたいなものですから、アホらしいと思う方は読み飛ばしてください。

これまでかなりの新管を吹いてきた経験から言いますと、漆が落ち着いて変化していく過程にはいくつかの段階があると思います。

第1段階は、1、2ヶ月です。
漆に弱い方にとっては、尺八を吹く以前の問題だと思います。被れてとんでもないことになります。
私は漆は大丈夫なので、漆プンプン状態から吹き込むことができます。漆は空気中の湿気で乾いて硬くなると聞いてますので、吹き込むことが一番です、湿気と音楽振動を与えるのがいいように思います。
音移りなどで最初は不安定だったところなどが滑らかに繋がるようになる大事な時期だと思います。

第2段階は、1年です。
新管を吹いているとわかるのですが、あるとき急に息が一段深く入るように感じる時期があります。音に艶が出て楽器との距離感が短くなったように感じるのです。漆がしっかりと固まったのかもしれないですね。
それが大体約1年です。
毎日しっかりと吹き込んでる場合には、それが約10ヶ月に縮まります。

第3段階は、5年です。
毎日吹き込むことで変化していくのは楽器だけではありません、吹き手の方も自然に楽器に合わせて変化していってると思います。
その結果、漆も完璧に固まって竹に脂も染み込んで楽器の振動にも馴染みが出て、吹き手と楽器の一体感が身に付くのが5年かなと思います。
自分の指先の延長に楽器がある感覚です。

一応、変化を感じるのはここまでですが、最初に書きましたようにそれ以後も徐々に硬さは増していくようですので、長く吹き込むことで良い尺八は更に深味を増していくのだと思います。